実際の経験から学ぶ業績向上に直結する品質管理の方法

ISO/TS16949 取得対策─ ISO/TS16949
要求事項の5つのコアツールA

 先月号は、ISO/TS16949 要求事項の5つのコアツールのうち、「先行製品品質計画(APQP)を紹介した。本号では、「生産部品承認システム」と「故障モード影響解析」を解説する。

 

2.生産部品承認システム(PPAP)

 

(1)顧客承認事項


 読者のみなさんは、「納入仕様書」を扱った経験はないだろうか。納入仕様書は顧客の要求内容を仕様書形態にし、納入仕様書の記載内容に不備・不具合がないか顧客の承認を得るツールだ。顧客の承認を得ると、仕様内容から逸脱しなければ納入業者側の責任は問われないことになる。その意味で、顧客の承認を得ることがトラブル発生防止になる。
 図9に、生産部品承認システム(PPAP)の考え方を示す。
 

(2)生産部品承認システムを確実に実施するには


 図9で顧客承認を得る事が重要であることが理解できたところで、この客先承認を確実に実施するポカヨケ対策を考えておく必要がある(図10)。
 品質管理部門やISO9001/TS16949/14001 事務局が客先承認の重要性をアピールしても、どこかの部門が結果的にルール違反を起こしてしまうというような経験はないだろうか。このルール違反を防止する方法として、QC 七つ道具・チェックシートの考え方を活用すれば良い。
 「設計・工程変更連絡書」は、社内変更の内容を客先に承認を得るためのルールで、@客先承認の要否確認欄の設定、A関係部門の事前承認、B関係部門すべての部門が承認印を押印しないと製造担当部門は製造を開始しない。
 また、購入品の製品仕様変更は、受入検査部門が確認して顧客承認を得る処理ルートに乗せ、購入先の生産工場の変更は購買部門が購買契約で変更願い処理を行う。

3.故障モード影響解析(FMEA)

 ISO9001 では、予防処理の要求がある。これは、考えられるトラブルを未然に防止するための対処・処理方法である。
 ISO/TS16949 では、この考え方をQC 手法のFMEA で解析し、未然にトラブルの発生を防止するよう要求している。またISO/TS16949 では、FMEA の活用を設計と製造の工程で要求している。

 (1)設計のFMEA

 設計のFMEA では、検討すべき事項を予め予測し記載するとともに、解析の都度解析事項を追加することが望ましい。

 (2)工程のFMEA

 「工程のFMEA」についても製造工程上不良を発生させる要因が数多くあり、これらの発生要因発生防止を、ポカヨケ的に対策を講じることが重要となる。
 [例]めっき膜厚不良を発生させる要因
 めっきの膜厚を左右する要因としてめっき時間が考えられ、評価サンプルを作成すると図11 の結果を得られた。この結果を基に、QC 工程図・QC工程表に記載し工程管理を実施することで、めっき膜厚不良の発生は防止可能となる。
 このように、製造工程にて不良となるであろう製造条件や製造環境をFMEA で解析し、管理項目を設定する。設定に当たっては、統計的手法の分析結果をQC 工程図・QC 工程表に記載し、管理図
やチェックシートで管理を実施する。
 製造条件・製造環境が製品特性に影響を及ぼす項目を図12、図13 に、QC 工程図・QC 工程表に記載した内容を図14、図15 に示す。

 (3)設計・製造工程外のFMEA

 以上、設計および製造工程をFMEA で解析する内容を述べてきたが、営業、購買、生産管理などの部門でもトラブルを発生させる要因を持っている。

 

 ISO/TS16949 で要求しているFMEA は、トラブルの未然防止にある。企業の業務は設計・製造の他に各種の業務があり、各業務にはトラブル発生の要因が潜在している。その内容を表したのが図16 および表2で、これらを未然に発生防止をする必要がある。

 

筆 者:ながい まもる
TQM Labo コンサル 代表
所在地:〒180-0011 東京都武蔵野市八幡町4-2-3
T E L:0422-53-2979
E-mail: morii007@hb.tp1.jp


昭和43 年、日本電気に入社し、33 年間品質管理・品質保証を担当。
@マネジメントシステムの構築
A統計的手法の活用による品質改善
B香港駐在での海外部品の品質保証体制構築。


「企業の利益を得る品質管理、簡単に品質保証をできる体制作り」をモットーに活動中


 

 

 

関連ページ

実際の経験から学ぶ業績向上に直結する品質管理の方法1
ISO/TS16949 で特に注目すべき事項として、5つのコアツールが上げられる。ISO/TS16949 でにわかに活用を要求しているように筆者は感じ取っているが、これらの5つのコアツールは自動車関係の品質保証のためのツールではなく、すべての品質保証に活用できるものと考えている。 そこでまず、品質管理の歴史をひもといてみよう。