市販の見積ソフト(コストテーブル)の選び方
市販の見積ソフト(コストテーブル)は、自社には合わない、かといって自社でコストテーブルを製作するには投資額が大きい、あるいは作れないとあきらめていませんか。
このため製品の原価を設定するにあたって、過去の実績からの類推や誰かが設定したものなどを用いていないでしょうか。
また、購買部門での部品見積にあるように複数社の見積もりを依頼し、もっとも安価な価格提示をした会社を選択するというように比較で原価を設定していませんか。
これらは、「もうコストダウンは限界だ。」と考える方たちの手法です。
原価管理を推進するためには、まず原価を計画することが重要です。
そして、その計画した原価が、信頼性にたるものになっていなければ、原価を管理すること自体に有効性がなくなってしまいます。
たとえば、設計部門では、目標原価が設定されています。
「目標原価が達成できた。」と評価した金額と実際に生産したときの実績原価の間に大きな隔たりが生じたときに、その理由が明らかにできなければ、目標原価は信頼されなくなります。
そして、その目標原価のしくみは、いずれ使わなくなるでしょう。
このため原価管理を有効に活用できるための原価を計画するシステム(見積システム)が、必要になります。
その方法には、市販の見積ソフト(コストテーブル)を活用する方法と自社で独自にソフトを開発する方法があります。
つまり、make or buyの検討がされることになります。
これは、多くのソフトウエアを導入するときも同様です。
その一例として、生産管理システムを導入するときの検討が、この見積システムにもあてはめることができるでしょう。
生産管理システムでは、市販のソフトウエアに対して、自社は特殊であるといって、検討を拒絶してしまうことがみられます。
そして、自社で独自にシステムを開発しようとするのですが、生産管理に関する理解不足によって、論理性に欠けるシステムになってしまい、使いにくく、効率の悪いシステムを構築してしまうことを見受けます。
これは、開発することが悪いと言っているわけではありません。投資効果と開発の期間を考えてのことです。
迅速にシステムを立ち上げ、有効に活用しようとするのであれば、市販のソフトウエアを活用することも有効であり、その選び方(評価)が大切であるということです。
それでは、市販の見積ソフト(コストテーブル)を有効に活用するための選び方について述べます。
見積ソフト(コストテーブル)を選ぶにあたっては、見積ソフト(コストテーブル)そのものと受け入れ側情報の整備に分けて考えることができます。
その内容を以下にまとめました。
1.見積ソフト(コストテーブル)そのものについて
@.論理性・科学的な裏付けを持っていること。
コストを計算するうえで、論理性を備えること。
また、作業や加工時間などを科学的に求め、しっかりとした裏付けをがあること。
A.管理水準や技術水準を考慮できるようになっていること。
稼働率や一般余裕率などの管理水準を反映できるようになっていること。
設備機械の性能や剛性などの技術水準も加味できるようになっていること。
B.標準を改定できること。
材料単価をはじめ、管理水準や技術水準など改定できるようになっていること。
C.精度が高いこと。
加工時間や時間単価などの情報を詳細に入手でき、応用できるようになっていること。
これらの中で、とくに論理性・科学的な裏付けが重要です。
たとえば、フライス加工において、平面に加工することを考えてみましょう。
平面の加工回数は、平面幅を刃物の直径で除して求めればよいというものではありません。
そこには、エンゲージ角が考慮される必要があります。これは、論理性の一例です。
そして、コストテーブルで計算したコストと現状のコストの差額から、その原因や対策、改善案を求めるにあたっての分析ができるようなしくみを持っていることが必須です。
2.受け入れ側情報の整備について
@.利用の目的が明確になっていること。
見積ソフト(コストテーブル)について、設計段階での目標原価の達成度を確認するため、調達段階でのコストダウンをするためなどその活用目的が明確になっているかということです。
それは、活用目的に応じて、反映すべき設定値があるからです。
また、設計段階でも構想設計段階と詳細設計段階では、要求される精度に違いがあります。
そして、構想設計段階では、コストの優位性を判断できればよいのですが、その裏付けは必要になります。
A.自社の製品の特徴を理解していること。
製品の特徴によって、必要になる設備機械や工程が異なってきます。
市販の見積ソフト(コストテーブル)は、事前に設備機械が設定されています。それに対して、自社で必要になる設備機械をどの程度カバーできているかということです。
100%カバーできるケースは、ほとんどないと思います。どこまでカバーできればよいかを考えておくことが必要です。
B.自社の現状の管理水準や技術水準が設定できること。
前述しましたが、市販のソフトが、自社に合わないと考える多くの理由は、自社が特殊であると固定観念に基づくものです。
これは、生産管理システムの導入を検討するときに、自社は特殊であるといって、市販の生産管理システムの検討を拒絶してしまうことと同様です。
生産管理システムの評価の仕方と同様に、見積ソフト(コストテーブル)の場合も、自社の現状を分析し、どこまで対応できるかを評価することが必要です。
固定観念での悪い例を掲げます。
ここに図面を見ると旋盤加工と焼入れ処理の2工程で製作できると読み取れる品目があります。
しかし、実際の加工手順は、旋盤加工(粗加工)⇒焼入れ処理⇒旋盤加工(仕上げ加工)という工程が必要です。
この場合、実際の加工手順を知らずに見積もりの工程を設定してしまうと、旋盤加工⇒焼入れ処理となります。
さらに、旋盤加工では、一度取り外して、再度チャックしますので、中心を出しなおすための芯出し作業が追加されることになります。
このようなことから加工時間が、実際に必要になる時間よりも大きく短縮されて示されることになります。
そして「市販の見積ソフト(コストテーブル)は使えない。」と判断することになってしまうのです。
このような差異の差について、その原因を知り、見積ソフト(コストテーブル)に対策が施されているかを知ることが評価するうえで大切なのです。
市販の見積ソフト(コストテーブル)の検討するうえでは、このように自社のモノづくりに関する情報と見積ソフト(コストテーブル)の両面からしっかりと整理しておくことです。