コストダウンに必要なモノサシ
「コスト意識を持って、改善を進めよう。」という言葉を聞くことがあります。
それは、問題意識をもって、行動しなさいということでしょう。
この問題意識は、何によって問題と判断するのでしょうか。
自分の持っている判断基準となる数値やイメージなどによって、実際との違いを認識したときに、行動を起こすになります。
品質管理の管理図は、この代表例でしょう。
昨年の金融緩和以降、円安傾向になってきたことによって、一部の原材料費が上昇してきています。
また、海外から調達してきた部品も為替によって価格アップになり、国内で円高によって押さえつけられていた加工メーカーも値上げを要求したとこともあります。
そして、消費税のアップが始まりました。
この結果、価格の上昇を押さえるためにコストダウンの重要性が増してきています。
その一方で、「コストダウンは限界に来ている、もうムリだ。」と考えている企業もあります。
このような状況の中で、「どのようにコストダウンを進めればよいのか。」の相談をよく受けることがあります。
それらの企業を訪問し、実際に打合せを持ってみると多くの企業に共通する課題があります。
それは、ものづくりに関する知識の不足とコストに関する意識が欠如してることです。
設計部門では、図面化するための創造性が重要であるとともに目標原価を達成することが求められます。
ところが、実際に相談のあった製品をみると、もっと安価な構造や部品形状で製作できそうに見えることがよくあり、私なりに見直しを図ったところ、多くのケースでコストダウン出来そうでした。
これは、製品の構造や部品形状、材質などが原価にどのように影響しているのかを理解していないことにあります。
そしてもう一つ、購買部門では、相見積りで安価な金額を選択するだけで、部品の作り方に関してあまり情報を持っていない、つまり商品知識が不足しているということです。
それでも、多少のコストダウンは可能でしょう。
しかし、私が訪問した会社の中には、コストダウンの後に思わぬシッペ返しを受けて気づかないというケースをしばしば見受けられます。
これらの原因は、まず生産している品目の現場を理解できていないということがあります。
その理由としては、工場や生産現場が近くに無いことが多い。たとえば、協力会社に依存している、工場が海外に移転しているなど現場を見ない、知らないということです。
そして、それらのものづくりについて、コストのモノサシを持っていないからです。
たとえば、1m×1mの壁にハケでペンキを塗ったならば、「何分かかって、いくらになる。」というようなことです。
このときに、コストのモノサシは、実務を反映した理論性・科学的な裏づけを持っていることが必要です。
ある大手企業の原価部門では、設計部門の目標原価の達成度を確認するために、見積原価の積算業務を行っています。
その課長さんとの話で、「原価部門のメンバーには、現場を見に行くように指導している。しかし、忙しいという理由で現場になかなか行かない。」と嘆いていました。
その結果、机上の計算のみで、計画した原価と実績の間に大きな差額が生じるケースが発生しているそうです。原因は、工程の違い、必要な作業の不足、設備機械の選定違いなど様々です。
これは、いずれ原価部門の見積原価の信頼性を失わせることになってしまうことを心配してのことです。
今日の原価管理では、原価を計画し、実行、その結果を確認し、行動へと管理サイクルを回します。
したがって、原価計画の段階をしっかりと築き上げておかないと、役に立たない原価管理になってしまいます。
つまり、コストダウンのためには、コストのモノサシを持っていることが必要です。そのモノサシは、理論性・科学的な裏づけを持っていることです。
そして、コストのモノサシを誰もが理解でき、納得できる図表や計算式で表わし、迅速にコストを積算しようとするツールが、コストテーブルです。
コストテーブルを活用することによって、品目のコスト基準値を持ち、現状コストとの比較によって、設計、調達、製造などでの改善を進めることができます。