赤字受注はなぜ起こる?「儲かるように見積もりを作っている筈」なのに・・・
板金加工品の見積もりは難しい?
この1,2年ほど前から「板金加工品の見積もりは難しい」ということをよく聞きます。
なぜ板金加工品の見積もりが難しいというのかを知り合いの会社の見積担当者数人にお聞きしました。
彼らのほとんどは「板金加工を理解していないのでしょう」という意見でした。
そして、「見積もりが難しい。」といった方たちの意見を確認しますと、
@板金品の展開図を作成することができない
まず、図面から展開図を作成できないことです。単純に1点の部品の場合と複数の部品を溶接などで組付けて1つの部品になる場合があります。
昔の設計者は、紙を折り曲げて形状を確認していた記憶があります。1点の部品の場合には、これで展開図を作れるでしょう。
複数の部品は、現品や過去の類似部品を見て、確認することによって、容易に部品分けできるはずです。
A各種の設備機械が、どのような加工ができるかを知らない。詳細な加工工程がわからない
通常、鋼板を切断する場合には、レーザー加工機やNCTプレス、NCTレーザー加工機、ガス溶断機などの設備機械があります。
まずこれらの設備機械を知らないことです。
これは、工程の記載されている見積書を見ることができれば、ある程度設備機械を設定できるでしょう。
そして、設備機械の詳細工程にあたる直線切断や曲線切断、丸穴や角穴あけなどを知らないのです。
これたの詳細工程は、実際に設備機械を操作しているところを見ることです。
B各種の設備機械の能力や精度を知らない(これが一番多い!)
Aと重複する部分はあるのですが、設備機械によって、加工限界(精度、板厚など)が異なります。
これは、設備機械の選定のポイントの一つです。同じ種類の設備機械であっても、能力の違いがあります。
たとえば、レーザー加工機の4.5kwと6kwでは、切れる鋼板の厚みが異なります。
この能力は、見積書と保有する設備機械を見ることによって、ある程度確認することができます。
これらの項目は、実際の見積もりを行ううえで、事前に知っていかなければならない要件であり、会社として整理しておくべきものです。
そして、そのうえで以下の手順を進めることで、もっとも合理的で安価な作り方を決め、それを実行することになるわけです。
C品目別、設備機械ごとに所要時間を算出する。
D各種の設備機械や工具などの費用を理解し、時間あたりの単価(加工費レート)や付加加工費などにまとめ、合計の見積金額算出に活用する。
E作り方をコスト・シミュレーションによって検討し、もっとも合理的で安価な工程手順が決める。
話を戻します。「板金加工品の見積もりは難しい。」という理由は、やはり板金加工の基本を理解していないことです。
製造現場を見て、その操作を聞くことです。調べようと思ったら、調べることのできる内容です。
やはり、見積もりに関係する社員が板金加工そのものを知ろうとしていないことが一番の問題です。
また、会社側も、生産拠点を海外に移していく中で社員への教育を実施していないことも原因の一つです。
そして、板金加工を知ることなく、見積もりをできないかと考える会社が、少なくありません。その代表例が、CADデータをもとに見積金額を積算する見積ソフトに依存することです。
@からBが整理されていない場合、部品の点数や組合せ方(組立順序)、溶接方法、溶接箇所など見積ソフトの前提が合致しているのか不明です。
つまり、前提が変われば、見積金額が変わっても当たり前なのです。その状態で見積ソフトの金額と実際に購入している金額に大きな開きが発生しても不思議ではありません。
このため、製造企業の中には、失われていく加工技術の知識を社員に教育していくための機会を設けべきです。
また、一部の製造企業では、このことに気づいて、研修を実施しているところもあります。
しかし、多くの製造企業は、生産拠点が海外に移ったことで、マネジメント力(管理技術)が重要であると加工技術(固有技術)を軽視してきています。
近年は、製造企業の生産技術力が低下しているという意見もこの加工技術(固有技術)の軽視にはじまっています。
今一度、加工技術に関する知識やノウハウの蓄積を進めていくべきです。加工技術の知識やノウハウは、よりよい製品づくりに繋がります。
また、加工技術の知識やノウハウがないと、コスト意識の向上やコストダウンを叫んでも、何ら対策を打てなくなってくるからです。
コストテーブルを活用した原価の見積、原価管理、MRPUをベースとした生産管理システムによるコストダウン・コンサルティングを中心に活動しています。
機械加工品の見積もりソフト
「コスト・シミュレーター」
「切削・研削コストテーブル」
「簡単見積切削品」
板金加工品の見積もりソフト
「コスト算定システム」
「簡単見積板金品」
これまで、加工品見積ソフト5種類ともにExcel32bit版にのみ対応していましたが、今回Excel64bit版にも対応することになりました。
これによって、Office2013以降のプリインストール版に、Excel64bit版が搭載されている場合でも、すぐに見積ソフトを運用することができるようになりました。
また、Excel32bit版とExcel64bit版が混在している環境でも、区別することなく、同じ操作で見積コストを算出することができます。
操作方法や機能などの詳細は、弊社HPの見積ソフトおよびデモ動画のページを参照ください。
なお、現在デモ版の配布は行っておりません