赤字受注はなぜ起こる?「儲かるように見積もりを作っている筈」なのに・・・
私は、研修やセミナーなどで「会社の第一の目的は利益の獲得である。」と述べています。
製造企業では、製品を作って売ることで利益を得ています(売価ー原価=利益)。
つまり、利益確保のためには、売価に対する原価の関係が大切になってくるわけです。
そして、商取引においては、売価を決定するための見積書があります。
見積書をもとに交渉によって価格(売価)が決定することになります。
さらに決定した価格(売価)によって、その価格未満で製品を作り、販売することを進めなければなりません。
これは、目標原価の設定であり、その目標原価で製品を作ることが求められるのです。
さらに目標原価では、製品を作る前に原価を知ることであり、はやりここで見積書(見積金額)が必要になります。
この見積金額は、一般に材料費と加工費から構成されます。
また、加工費は、所要時間(加工時間)と時間あたりの単価(加工費レート)から成ります。
さて。
どこの現場でも発注をする際には価格交渉をしていると思います。
値決め(価格交渉)では、まずは見積書の金額を見てスタートすることになります。
顧客(発注側)は少しでも安価に買おうと、取引先(受注側)は少しでも高値で売りたいと考えます。
ですのできちんと利益をのせて見積もりを作るはずです。
しかし・・・。
私の経験では、見積もりの段階で赤字になってしまっているというケースがしばしばあります。
どうしてこんなことが起こるのか?
理由の一つが、見積もり時に単価(金額)だけで明細がない見積もりを作ってしまうことです。
昔の見積書を引っ張ってきて、そのまま数量と日付と相手先の名前を変えて見積もりを作ってしまうなんて経験はありませんか?
見積もりに関する知識が無いければ、単に金額の高い安い、下げてくれの交渉にしかなりません。
一方、見積もりや加工に関する知識がある場合には、材料費はいくらか、工程ごとに加工費はいくらか、といった明細を確認するでしょう。
このときの見積もりに対する知識が、しっかりと裏付けのある数値や金額、条件であればよいのですが、あいまいな知識や誰かから伝え聞いた内容であることがあります。
具体的な事例で考えてみます。
ある機械メーカーA社の管理部門には、取引先からの見積書の査定(評価)を担っている部署があります。
そして、A社では、レーザー加工機(出力4.5kw)の時間あたりの単価が、85円と設定されています。
この数値について、私の方から、
@レーザー加工機(出力4.5kw)の購入金額はいくらか
A作業者の費用(労務費)をどのくらいで考えているのか
Bアシストガスは酸素、窒素のいずれか、また費用をどれくらいみているのか
など質問させていただきました。
この結果について、A社の社員の方から「85円/分」で決めていると回答がありました。
しかし、なぜ85円なのか?という根拠はわからないようでした。
つぎに板金メーカーB社からいただいた話をします。
その会社では、見積もりの効率化を図りたいということで相談を受けました。
その際には、B社の社長さんにレーザー加工機の時間あたりの単価(加工費レート)はいくらなのかを尋ねました。
すると社長さんは「5,000円/時間」ですと答えました。
この回答に対して私から再度質問をしました。
「社長さんの会社のレーザー加工機は、3,000万円前後でしょう。アシストガスは、いくらの費用を見ていますか。5,000円/時間では、採算が取れないのではないでしょうか」
社長さんは、自動搬送装置を導入し、効率化・合理化を図っているのだが、それでも採算をとるのに厳しい状況(ほぼ赤字)にあると述べてくれました。
この2つの事例を整理しますと、板金メーカーB社のレーザー加工機の時間あたりの単価5,000円は、1分あたりに換算しますと83.3円/分になります。
これは、2社の時間あたりの単価を比較する限り、一見、妥当な時間あたりの単価であるように見えます。
ここで、A社への質問@、A、Bになるわけです。
結論から述べますと、A社も、B社も、取り扱う製品や部品がレーザー加工工程だけではなく、次工程にベンダー(曲げ)工程や溶接作業の工程などがあり、これら複数の工程を経ている部品や製品が大半です。
そして、それら複数の工程で発生している費用を一律に換算した金額が、B社でいうところの時間あたりの単価(加工費レート)5,000円なのです。
それでは、板金メーカーが、CO2溶接作業の時間あたりの単価(加工費レート)が、5,000円といったらどうなるでしょう。
通常の顧客では、このCO2溶接作業の時間当たり単価5,000円と聞いたら、高くてビックリするでしょう。
これは、一つの工程だけで製作できる部品や製品の場合、レーザー加工では赤字になり、CO2溶接作業の工程の場合には非常に儲かることになります。
実際の受注では、複数の工程を経て部品や製品になるケースと一つの工程で部品や製品にあるケースが混在しています。
このように「時間あたりの単価を工程に関係なく一律で設定している」とせっかくとった受注が「赤字受注」だったなんてことになりかねません。
儲かると思ってせっかく受注したのに、結局赤字・・・なんて悲劇でしかありません。
時間あたりの単価を一律にしたり、大雑把な数値で見積もりをだしている・・・なんて現場は、このような赤字受注が往々にして起こっているのです。
「見積り」段階で赤字受注を避ける鉄則は、安価な設備機械の時間あたりの単価は安く、高価な設備機械の時間あたりの単価は高くです。
論理的で科学を取り入れた見積算出のシステムの構築を図ることが絶対です。
コストテーブルを活用した原価の見積、原価管理、MRPUをベースとした生産管理システムによるコストダウン・コンサルティングを中心に活動しています。
機械加工品の見積もりソフト
「コスト・シミュレーター」
「切削・研削コストテーブル」
「簡単見積切削品」
板金加工品の見積もりソフト
「コスト算定システム」
「簡単見積板金品」
これまで、加工品見積ソフト5種類ともにExcel32bit版にのみ対応していましたが、今回Excel64bit版にも対応することになりました。
これによって、Office2013以降のプリインストール版に、Excel64bit版が搭載されている場合でも、すぐに見積ソフトを運用することができるようになりました。
また、Excel32bit版とExcel64bit版が混在している環境でも、区別することなく、同じ操作で見積コストを算出することができます。
操作方法や機能などの詳細は、弊社HPの見積ソフトおよびデモ動画のページを参照ください。
なお、現在デモ版の配布は行っておりません