「認める」を続けていたら、チームの成果が向上していた!
コーチングにはいくつかの重要なスキルがありますが、その中の一つ、最も基礎的なスキルとして、「認める」ことがあります。
「認める」には色々な意味がありそうですが、ここでは、相手の発言・存在をありのままに受け止める、相手をありのままに認める、そんな意味でとらえてください。
さて、この「認める」をEI(エモーショナル・インテリジェンス)と絡め、少し深堀してみました。
EIはダニエル・ゴールマンにより広められた概念で、EQ(心の知能指数)としても知られています。
今回は、以下にEIコンピテンシー・マトリックスを引用しました。コンピテンシーは”行動特性”とでもいいましょうか、その人に備わった行動パターンのことです。
EIコンピテンシーは、他者と良好な関係を築く能力を高めることを目的にしています。いうまでもなく、コーチにとっても重要な能力です。
このマトリックスの、
縦軸は「認識と行動」。
横軸には「自己と他者」。
認識は、「認める」+「識別する」。つまり、認めて、判断すること。
行動は、何かに働きかけること。
EIコンピテンシー・マトリックスで重要な点は、行動特性には身に着ける順序があること。いきなりゴールの「関係管理」の行動特性に行き着くことはできません。
矢印の通り、まず身につけなければならないのは、常に「自己認識」。
自分を認め、自分自身の在り方を判断する行動特性です。
そして、最終的に「関係管理」、つまり他者との関係性を築く行動特性に行き着くことができる。
ゴールである「関係管理」の行動特性・能力が高まれば、良好なチームワークを生み出すリーダーシップが生まれ、思考の質が高まり・・・。と、なり、以下のダニエル・キム氏の成功の循環(グッドサイクル)に入っていける。
結果、より多くの成果を生み出し続ける組織が出来上がる。
そんな組織に変わっていけたら理想的ですよね。
さて、EIコンピテンシーに話を戻します。
既に触れたように、EIコンピテンシーには身に着ける順序があります。
自己認識がきちんとできて、他者認識も自己管理もきちんとできて、ようやく関係管理もできるようになる。
ここで、自己認識は、「認めて」「判断する」こと。例を挙げるのであれば、
l 自分自身の失敗も「認めて」それにどう対処するか「判断する」
l 自分自身の怒りという感情も「認めて」それにどう対処するか「判断する」
瞬間湯沸かし器のごとく怒り狂う上司は、自分自身の怒りという感情をそのまま表に出してしまっています。でもそうではなく、自分が怒りという感情を持っていることを「認めて」、その上でどう対処すべきかを「判断する」。それが自己認識です。
マインドフルネスに近いかもしれませんね。
では、自己認識の右隣、社会認識(他者認識)はどうでしょうか?
他者認識も、自己認識と同様に「認めて」「判断する」こと。例えば、
l 他者の失敗を「認めて」、その上でどう対処するか「判断する」。
l 他者の発言を「認めて」、その上でどう対処するか「判断する」。
l 他者の存在を「認めて」、その上でどう対処するか「判断する」。
一言で言えば、他者を決して無視しない、ということかもしれません。
結局、自己も他者も「認める」ことができてはじめて、「関係管理」つまり他者との良好な関係が築けるようになる。
そして、自分と他者を「認める」ことは、グッドサイクルの波に乗って、巡りめぐってチームや組織の成果を高めます。
「認める」こと、侮ってはいけない、と改めて感じた次第です。
著者
塙 健一郎 / 株式会社未来カ(みらいか)
渋沢栄一は「士魂商才」という言葉を残しています。欲は事業発展への必要条件かもしれませんが、その先にある本当の意味での満足感、幸福感は何から生まれるのか、それをクライアントの皆様と共に考え目指し、実りある関係を育んでいます。