強みとは「選ばれる理由」のこと
顧客の経営支援をする過程で、「強みの明確化」を行うことがあります。
自社の「強み」について経営者に尋ねてみると、
・当社にはこのような技術がある
・当社はこのような設備を保有している
・当社にはこのような協力会社のネットワークがある
などを挙げる会社が多いです。
このままの表現で留まってしまうと「強み」ではなく「自社の特徴」です。
この特徴が「顧客にどのようなメリットをもたらすのか」が伝われば初めて「強み」と言えます。
自社が全て独占している市場でない限りは、取引先を選ぶ権利は100%顧客側にあり、自社は顧客から選ばれる立場です。
よって、「顧客から選ばれる理由」こそが「強み」となります。
「顧客から選ばれる理由」が「強み」ということは、「強み」を明確化するためには、顧客の視点を持つことが必要になります。
しかし、顧客の立場になって考えるのは簡単ではありません。
そこでどうすればいいかと言うと、顧客に直接聞いてみるのがいいです。
「長年、当社とお取引を頂いていますが、どのような点を一番ご評価頂いているでしょうか?」と言った感じです。
ただし、これだけでは充分ではありません。
顧客の担当者が、当たり障りのない、あいまいな回答をすることもありますし、取引先選定の決め手を詳細に把握しているとは限りません。
よって、顧客と接点を持っている自社の営業などが、過去から現在の取引を振り返って、以下のような棚卸を行うことが有効です。
・過去、顧客に喜ばれたり感謝された取組み
・自社にしか対応できなかった提案依頼や見積依頼
・自社から提案して顧客に採用され、成果が出た事例 などです。
このような棚卸を行って抽出された「個別具体事例」を「一般化」して、強みを明確化します。
例えば、「切削加工を得意とする部品加工業」であれば、
「顧客から特定部品の耐久性を向上させたい」という要望に対して、「特定部品の仕様を満たす素材を再検討した上で代替となる素材を提案し、更に表面処理を施すことで高耐久を実現した」
という事例が、複数挙がったとします。
これを一般化し、「強み」として明確化します。
↓
「当社の強みは、豊富な素材知識を活かして最適な素材を選定し、切削加工と表面処理によって、部品の高寿命化を提案できること」
これであれば、単なる特徴ではなく、「選ばれる理由」になります。
次回は、このように明確化した強みを、営業活動にどう使うかを考えます。
米澤 裕一 / 合同会社バリューアップ
経営コンサルタントとして独立後、1年目でものづくり補助金で90%の採択実績を残す。勝てる土俵で顧客提供価値を高め、補助金を活用した資金調達やボトルネックの改善によって、200社以上の利益改善に貢献。