簡単にできることは簡単にマネされる
模倣戦略は、他社の優れた製品やサービスを参考にして事業を展開し、収益を確保する戦略です。
同質化戦略とか二番手戦略とも言われ、様々な市場で事例を見かけますが、市場参入における後発者の戦略としては有効な面があると言えます。
それでは、先発して市場に参入して一定のシェアを築いた企業、すなわち「模倣される側」には防御策はないのでしょうか?
固い言葉で言うと、「模倣困難性の確立」です。
特許のような知的財産権でガードすることができれば、それが理想です。
しかし、知的財産権で防げない場合でも、「手間暇かけた製品・サービスづくり」でガードすることが可能です。
手間暇かけた製品づくりで模倣を防いでいる事例として「チョーヤ梅酒」があります。
チョーヤ梅酒はサントリーやメルシャンなどを抑え、国内梅酒3割のトップシェアです。
チョーヤ梅酒は、「材料」と「製法」に徹底的にこだわっています。
まず材料は、梅、糖類、酒類の「天然素材のみ」を使用しています。
ところが低価格品は、酸味料、香料、着色料などを混ぜて作ったものが多いです。
チョーヤの梅酒は原価の約7割が梅ですが、低価格品はその梅を使わないので、かなり安く製造することができます。
チョーヤ梅酒は、一時、低価格品に押されてシェアがかなり落ち込みましたが、この材料で作る方針を守り抜きました。
その後、日本洋酒酒造組合が、梅、糖類、酒類だけを原材料とする梅酒を「本格梅酒」と定め、「本格梅酒」は酸味料などで作った梅酒と比べて、ポリフェノールを多く含むなど、品質の違いが消費者に周知されるにつれて、徐々にシェアが回復しました。
また、製法へのこだわりについては、約5000件の契約農家といっしょに、土作りから研究した高品質の紀州産の梅を中心に、国産の梅のみを使っています。
最長18年間も貯蔵タンクに漬け込み、じっくり熟成させた個性の違う梅酒をブレンドするなどして製造しています。
このような材料や製法へのこだわりは、手間暇がかかるのでなかなか模倣できません。
一般的に、模倣戦略を取ろうとするような企業は、手っ取り早く収益を上げたいために他社の模倣をするのであり、そもそも面倒くさいことはやりたがりません。
手間暇をかけて、顧客が満足する品質の商品・サービスを作り込む、そして、ぶれずにその方針を守り抜く。
簡単にできることは、簡単にマネされてしまいます。
米澤 裕一 / 合同会社バリューアップ
経営コンサルタントとして独立後、1年目でものづくり補助金で90%の採択実績を残す。勝てる土俵で顧客提供価値を高め、補助金を活用した資金調達やボトルネックの改善によって、200社以上の利益改善に貢献。