会社利益の「自分ごと化」
会社のお金も自分のお金と同じと思えば、確実に経費削減につながります。
しかし、これがなかなか難しいです。
自分の買い物の場合は、あちこちお店を回って、少しでも安いところで買う人も、会社の経費となると、相見積を取らずに、業務に必要だからすぐ買うというようなことがあります。
会社が大きくなればなるほど、会社の経費や利が、個々の社員の仕事に結びついているという意識を持ちにくくなります。
そんな社員の意識を、ある工夫をすることで、会社の利益を人ごとではなく、「自分ごと」に変化させた企業があります。
滋賀県にトップ精工というセラミックなど各種素材の加工を手掛ける社員100名の会社があります。
同社はリーマンショックで業績が悪化した際、社員の給与を2〜3割削減しました。
社長は、今後、このようなことをしなくてもすむ方法はないか、思案をしました。
そして、給与手当の内容を変更することを思いつきました。
・住宅手当(借家でも実家でも支給) 支給額4.3万〜7.6万円
・家族手当(家族持ちも独身も支給) 支給額2.5万〜5.5万円
ポイントはそれぞれの手当に停止条件と再開条件を付与したことです。
・住宅手当は3カ月連続赤字で停止、3カ月連続黒字で再開
・家族手当は赤字の次年度は停止、黒字になったら再開
そして、毎月の利益状況を社員に開示しました。
すると、社員の意識に変化が生じました。
「先月は赤字だから、これが続くとまずい。手当を減らしたくない」
「自分は利益を稼ぐ一員なんだから頑張ろう」
この意識変化は、各社員の行動に結びつきました。
制度導入後、手当の停止は一度もないそうです。
会社の利益を自分のこととして意識させる仕組みとして、参考になる事例です。
米澤 裕一 / 合同会社バリューアップ
経営コンサルタントとして独立後、1年目でものづくり補助金で90%の採択実績を残す。勝てる土俵で顧客提供価値を高め、補助金を活用した資金調達やボトルネックの改善によって、200社以上の利益改善に貢献。