「利益思考力」事例1
差別化の余地が少ないと思われるレッドオーシャン業態でも利益を出す事例
「利益思考力の強化」というセミナーや研修に注力していますが、このコラムでは、企業における「利益思考力」について考えていきます。
利益の追求には、基本的には「無駄を最小化する」と「新しい価値を生み出す」の2つの要素しかありません。
この2つの要素が、経営者だけでなく、幹部社員や一般社員にまでいきわたっている会社は「利益思考力のある会社」と言えます。
利益思考力に優れたクリーニング店の例を挙げます。
ここ数年、コインランドリー業界は大変な出店競争(レッドオーシャン)になっていますが、あるクリーニング会社はコインランドリーに人を常駐させて、洗濯代行をしています。
お客は、受付で洗濯物を渡すと、あとの作業は店の人がやってくれます。
料金はコインランドリーで洗った場合の実費精算と同じなので、大変お得です。
そもそもコストを抑えるための無人コインランドリーなのに、人を置き、追加料金も取らずに洗濯作業を代行して、はたして儲かるのでしょうか?
実を言うと…このビジネスモデルは、しっかり儲かっています。
どこで儲けているのか?
通常のコインランドリーは、洗濯中に買い物など他の用事に行ってしまい放置する人がいるため、稼働率は10%程度なのをご存知でしょうか。
しかし、このサービスでは、スタッフが作業するため、稼働率を50%以上に上げることができます。
ここで「数量アップ」が実現します。
さらに、来店時に洗濯物を受付する際、「通常の汚れ」と「しつこい汚れ」を仕分けして、コインランドリーで落ちないしつこい汚れについては、ドライクリーニングを提案します。
一定のお客はオプションのドライクリーニングを利用しますので、「単価アップ」が実現します。
このビジネスモデルは、クリーニング師の資格を持つスタッフを常駐させ、その人件費分はコスト増となりますが、上記の取組みで「数量アップ」「単価アップ」を図り、利益増を実現しながら、無人ランドリーでは得られない価値を顧客に提供しています。
このサービスを展開しているのは札幌市のジャバリンという店で、「コインランドリー店アワード 2020最優秀賞」を受賞しています。
https://www.nippon.com/ja/news/fnn2020101093182/
差別化の余地が少ないと思われるレッドオーシャン業態であっても、「利益思考力」が優れていると、同業他社とは違う価値を顧客に提供し、利益につなげることができるいい事例です。
米澤 裕一 / 合同会社バリューアップ
経営コンサルタントとして独立後、1年目でものづくり補助金で90%の採択実績を残す。勝てる土俵で顧客提供価値を高め、補助金を活用した資金調達やボトルネックの改善によって、200社以上の利益改善に貢献。