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「有事のルール ― まとめ/その3 理想と現実」

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有事のルール/まとめその3「理想と現実」

●その時々−つまり、日常発生する様々な事象に対する判断の妥当性と対応の適否が結果の良し悪しを左右する、という事になるとすれば、さしづめ「パワハラ」などは法令上の定義もない上、当事者自身が渦中にあって周りが見えない状態に置かれていたり、そもそも渦中にあることすら気づかない場合すらあり得る「判断の目安と対応の基準が大変判りにくく、蓋を開けてみないと結果が見えてこない事柄の代表格」と云って良いかも知れません。

 

 

●今日現在、そのハラスメント=嫌がらせや虐め=として一般的に認知度が高いのは、セクハラとパワハラ、最近話題になりつつあるのがマタハラ、モラハラに加えてスメハラ等とされていますが、妊婦に対するマタハラはセクハラとパワハラの中間点、モラハラ、スメハラはパワハラにより近い、と解して良いかと思います。

 

中でも、高い能力と識見を有し仕事熱心で常に正論を述べる等、申し分のないハイパフォーマーでありながら、他方高圧的で声も大きく、時に感情を爆発させることもある人物が、周囲を萎縮させ、常にその顔色を窺って業務を行う環境を生み出す結果、他部門からその環境下に転属となった者が、直属の部下でもなく又、その上司から直に叱責を受けた訳ではないにも拘らず、雰囲気に呑まれ、不安感からウツ症状を発し、ついには自ら命を絶つに至った「地公災愛知県支部長うつ病自殺事件」等は、正にモラハラ(本人は、自分の価値観や考え方に絶対的正義=モラル=があると信じており、無意識にそれを周りに押し付け、やり込めてしまう結果、相手は逃げ場を失い心理的に追い詰められる)の典型例といえるでしょう。

 

 

●デフレ経済の長期化により、多品種少量、短納期、低価格、サービス多様化、昼夜営業等の細分化・短縮化・高速化の流れが加速すればするほど、課されるノルマは日増しに重く、それに連れてゆとりを失った人間同士の関係が、より一層ギクシャクしたものとなるのは当然の結果ともいえます。

 

このような、殺伐とした組織を活性化し、相互理解と相互扶助の関係を再構築させる切り札として何度か取り上げ、ご紹介したのが「クレド」という、経営理念実現の為の業務革新ツールです。

 

同僚社員や上司、部下だけでなく、顧客や取引先、株主等を含めた内外のステークホルダーとの関係を、社員各自が正しく認識し、ステークホルダーに対し、各自がそれぞれのポジションで、何をどう提供し、どう満足してもらえるかを考え、その考えを具体的な行動指針に落とし込んで共有し、そのガイドラインに基づいて行動する−。
それを最も良く体現し、業界でもきわめて高い評価を受けていたのが他ならぬ「リッツカールトン(RC)」でした。

 

 

●リッツでは、従業員全員が、裏表二つ折り全8ページに及ぶ名刺大のクレドカードを常時携帯しており、その主なタイトルを拾うと、「クレド」「サービスの3ステップ」「モットー」「従業員への約束」「サービスバリューズ」が列挙され、その中では、利用客に「−最高のパーソナル・サービスと施設の提供を約束-」し、「−RCの一員であることを誇りに思う−」と従業員自らに宣言せしめています。
そのRCで起きた、あの食材偽装−謝罪の席上で社長が思わず漏らした「認識不足だった」の一言−は、一体何だったのか−たとえそれが直営店舗ではなかったとしても、リッツにしてこの有様なのかと、がっかりした方も大変多かったことでしょう。

 

 

●掲げた理想は輝かしくとも、それを根底からひっくり返す現実を突きつけられてしまうと、誰しも興ざめしてしまい、それと共に、並大抵ではない努力で築き上げてきたブランドも、あっけなく地に堕ちてしまう恐れがあります。

 

 

●それでもRCの躓きは、決して「クレド」にレッドカードを突きつけるものではない筈です。ハラスメントが横行するこの状況を打開するには、いまの処、やはり「クレド」が最適解であり、今回の事件では、それを如何に継続してゆくか、が問われているのだと思います。

 

 

 

 

 

有事のルール/まとめその3「理想と現実」

 

著者/

夏目 雅志  / 三友企業サービスグループ

常に決断を迫られる経営者。
私達は常に経営者の傍らでその背を支え続けます。

 

 

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